今日は、高齢者が発熱、全身の筋痛で発症する「原因不明」とされている病
リウマチ性多発筋痛症(PMR)についてです。
Key Point
①ステロイドの誘惑とどう戦うか
②PMR mimickerを想起
③全例で血液培養を採取を
④診断できれば、側頭動脈炎、癌を探す
想起
・60歳以上
・両肩の痛み
「起き上がりにくい」など
・発症した日付が言える
・採血で炎症反応の存在がある。
診断基準(スコアリングアルゴリズム(2012ACR))
前提
60歳以上で両肩の痛みと炎症反応の存在がある
スコア
・45分を超える朝のこわばり:2点
・臀部痛または動きの制限:1点
・RF陰性or抗CCP抗体陰性:2点
・他の部位の関節症状がない:1点
・関節エコー所見:0-2点
エコーなしなら4点以上
エコーありなら5点以上 で診断
治療
PMRはステロイドが著効します。
15mg/dayで開始し1weekで症状が消失します。
その後は
10mgまでは2.5mg/週で減量
10mg以下は1mg/月で慎重に減量
ステロイドの減量により容易に再発します。3mg以下を目標に減量します。
上記のとおり、診断は臨床診断による所が多く、またステロイドが著効します。
診断がグレーな状況になると、
「ステロイド使って様子見ようかな、、」
という誘惑が訪れます。
診断的治療自体は、良いプラクティスですが、
しかしステロイドを使う前に「PMR mimicker」
と呼ばれる、症状が似ている疾患の想起が必要です。
PMR mimicker(鑑別疾患)
リウマチ性疾患
RA、側頭動脈炎、結晶性関節炎、RS3PE、血管炎、炎症性筋炎
内分泌疾患
甲状腺疾患、副甲状腺疾患
感染症
菌血症、IE、ウイルス感染症、脊椎炎、化膿性関節炎、前立腺炎、結核
悪性腫瘍
MM、傍腫瘍症候群
その他
線維筋痛症、パーキンソン、うつ病、VitaD12欠乏
これらの疾患の除外が必要です。
特に注意すべき、PMR mimickerを
・高齢発症関節リウマチ
→PMRにそっくり。ステロイドにも反応する。経過を観察して関節炎が主体となっていかないかを観察する
・結晶性関節炎(crowned dens syndrome)
→頸の回旋が困難でPMRに似る。NSAIDsのみで改善に向かう
・RS3PE
→PMRと合併も多い。上肢、遠位優位である。
・菌血症
→もっともステロイド開始前に除外すべき疾患。
PMRを疑えば全例で初日に血液培養を 。
・血管炎
→血管炎特有の症状(多発単神経炎、間質性肺炎、肺出血、進行性腎炎、皮膚潰瘍)がない時にPMRに似る。高齢者はANCAが多い
・ウイルス感染症
→炎症反応高値は非典型的だが、、対症療法で改善するのを見る
・結核 →典型的ではないが、ステロイド投与前に結核の有無は検査すべき
PMR疑いの患者さんに対してのFirst touch
オーダーする検査
・炎症の証明
→CRP、血沈 (血沈>30 感度98.1 血沈>40 感度95.7)
・感染症除外
→CBC、血培、肝胆道系酵素、Inf-γ IGRA
+疑わしいウイルス感染症
・リウマチ除外
→RF
・エコー
→滑膜炎、滑液包炎所見 を探す
・その他
→疑えば甲状腺、MM、VitD12、ANCA、蛋白分画(MM)
治療
・アセトアミノフェン(+NSAIDs)で経過観察
・血液培養の結果を待ち
陰性であれば、ステロイドの開始を検討する

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