「おしっこにバイキンがいる。」
あまり気持ち良いものではありません。
入院患者さんの尿検査で尿細菌が(+)となれば、
さらに、白血球反応(+)となれば、、
治療したくなるのは常です。
今回は IDSA 2019年のガイドライン
https://www.idsociety.org/practice-guideline/asymptomatic-bacteriuria/
から抜粋して、「高齢者の無症候性細菌尿」について考えたいと思います。
Key point
・無症候性細菌尿(ASB)のスクリーニングや治療しないことが推奨されている
・ASB治療によるメリットはない
・ASB治療によるデメリットはCD腸炎増加や耐性菌増加などがある
・膀胱刺激症状がない尿路感染もあるが
せん妄や、転倒などがあれば治療を考慮しても良いかもしれない
無症候性細菌尿(ASB)の定義
膿尿の有無にかかわらず、尿路感染(UTI)に起因する
徴候または症状がなく
特定の定量的計数(105コロニー形成単位[CFU]/mL以上または108CFU/L以上)で
尿中に増殖する1種以上の細菌の存在である
尿中の白血球は関係ないというのは
個人的に驚きでした。
IDSAのガイドライン
ここからはIDSAのガイドラインから、以下2つのCQの抜粋です。
① ASBは地域社会に居住する機能障害のある高齢の女性または男性、
または長期ケア施設の高齢の居住者においてスクリーニングされ、治療されるべきか?
②高齢で機能的または認知的に障害のある患者で
ASBと症候性UTIを鑑別する非局在化症状はどれか?
1つずつ見ていきます。
①ASBは地域社会に居住する機能障害のある高齢の女性または男性、または長期ケア施設の高齢の居住者においてスクリーニングされ、治療されるべきか?
Recommendation
・機能障害のある高齢の地域在住者には、ASBのスクリーニングまたは治療を行わないことを推奨する。(strong recommendation, low-quality evidence)
・長期療養施設に入所している高齢者では、ASBのスクリーニングまたは治療を避けることを推奨する。(strong recommendation, moderate-quality evidence)
解説
・複数の前向きコホートやRCTで、抗菌薬治療群と無治療群において
死亡率と感染症罹患率に差がでなかった。
・抗菌薬治療を受けた患者のCDIリスクと耐性菌の検出を有意に増やした。
・以上からASBのスクリーニングまたは治療を
受けるべきでないと推奨されているが
Systematic review&meta analysisはまだない。
・しかし現状として、ASBは半数以上が治療されている。
・ASBと治療すべきUTIを分離するバイオマーカーとして
膿尿の程度やIL-6などが期待されたが、有意な結果は出なかった。
ASBとUTIを分離するのは難しいです。。
症状で鑑別はできるのでしょうか?
②高齢で機能的または認知的に障害のある患者でASBと症候性UTIを鑑別する非局在化症状はどれか?
Recommendation
認知機能障害もしくはコミュニケーション障害があり
細菌尿があり膀胱刺激症状がない患者が
・せん妄を疑う急性の精神状態変化、錯乱を有する時は
抗菌薬治療よりも他の原因の評価および注意深い観察を推奨する。
(strong recommendation, very low-quality evidence)
・転倒したときは
抗菌薬治療よりも他の原因の評価および注意深い観察を推奨する。
(strong recommendation, very low-quality evidence)
解説
・せん妄患者はせん妄のない患者よりも細菌尿を有する可能性が高いことを示唆する研究は多数あるが、年齢や併存疾患、運動性低下などの交絡因子は完全には調整されておらず、残存交絡の可能性が高い。
・このため、細菌尿とせん妄の間の因果関係は確立されていない。
・転倒に関しても同様の研究はあるが
RCTやSystematic reviewはなく因果関係は確立されていない。
考察
・尿中白血球数が多かろうが、基本的に無症候であれば治療はしないことが
現在のスタンダードのよう。。
・ただ、せん妄や転倒などが起きた時に、
細菌尿の治療を1つのプラクティスとして想起できるかが大切のようです。
・UTIとASBを分離できる方法、、
唯一できるのはGram染色で貪食像+細菌の膨化をみた時でしょうか。
バイオマーカーで判断できれば、耐性菌対策にも貢献は大きそうです。
コメント