今日は腰背部痛の診療フローチャートを作成しました。
腰背部痛の鑑別というと、大動脈解離です。
解離の症例はやっぱりGeneralが悪く、冷や汗をかいています。じっとりと。
繰り返してABCを確認することが大切かと思います。
ポイントは
①ABCの評価を繰り返す②RED FLAGはTUNA FISH
③女性は妊娠反応を

腰背部痛診療フローチャート
Key point. Pit fall.Clinical pearl
・ヘルニアと思っても、足背動脈は触知。血管病変かも。
・尿管結石でエコーするときは、腹部大動脈も一緒に確認
・尿路結石はa.m4時に多い
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First touch
♦to do
・Vital(発熱)
・既往歴、内服薬(癌、心房細動、血管リスク、ステロイド内服、飲酒歴)
・現病歴
TOSS:増悪傾向、突然発症or一ヶ月以上持続、夜間の痛み
(体重減少、体動時の痛み、受傷起点はあるか、外傷歴)
・腹部診察、CVA叩打痛、脊椎叩打痛
・膝窩動脈、足背動脈触知
・直腸診(膀胱直腸障害、会陰部の感覚低下、肛門弛緩確認)
・身体診察
①下肢進展挙上試験(SLR):L1-L3神経根の圧迫
一方の手でかかとを持って、膝を伸ばしたまま下肢をゆっくり挙上。
30〜60°挙上で坐骨神経痛(下腿の放散痛)が誘発されると陽性
②大腿神経進展テスト(FNST):L5-S1神経根の圧迫
患者を腹臥位にし膝関節を90度に曲げ、そのまま上方に引き上げる。
大腿神経に沿った痛みが誘発されれば陽性。
③デルマトーム
大腿外側(L2)、大腿内側(L3)、下腿内側(L4)、下腿外側(L5)、足の裏(S1)、肛門周囲(S2-5)
④ROM
股関節屈曲(L1-3)、膝伸展(L3-4)、母趾背屈(L5)、肛門括約筋(S2-4)
⑤反射
膝蓋腱反射(L3-4)、アキレス腱反射(S1)
【Red flags陽性】
→エコー、造影CT、血培、MRI(STIRを含め)を鑑別に合わせて
【Red flags陰性】
→整形疾患を疑うなら腰部単純Xp
→尿管結石を疑うならエコー+補液+疼痛管理
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♦鑑別
【Red flags陽性】
・血管病変
→大動脈解離、感染性動脈瘤、AAA、腎梗塞、脾梗塞
・腹部臓器疾患
→急性膵炎、腎盂腎炎
・脊椎感染性疾患
→化膿性脊椎炎、椎間板炎:発熱、寝汗
硬膜外膿瘍:圧迫症状も加わる。
腸腰筋膿瘍:腸腰筋兆候(股関節を他動的に進展して痛い)
化膿性脊椎炎:呼吸症状、結核の既往
・悪性腫瘍
→がんの転移、MMの病的骨折
50歳以上、既往、体重減少、1ヶ月以上持続
・自己免疫性
→強直性脊椎炎(脊椎、仙腸関節の炎症)
疥癬性関節炎:爪の変形、DIP優位の関節炎
反応性関節炎:尿道炎、性感染症、腸炎など
炎症性腸疾患に伴う関節炎:腹痛、下痢、血便
SAPHO症候群:掌蹠膿疱症、胸鎖関節炎
・子宮、卵巣
→卵巣出血、異所性妊娠、卵巣捻転、骨盤内炎症性疾患
・馬尾症候群
→MRIを撮像
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【Red flags陰性】
・尿路結石
・急性腰痛症
筋肉+靱帯の損傷
対症療法+できるだけ動くように指示
1ヶ月ほど持続することを説明
・椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎すべり症
半分の患者は2週間以内に70%は6週間以内に回復する。
根症状や馬尾症状あれば入院
・圧迫骨折
70歳以上、女性、ステロイドなどリスク
側臥位にして全ての棘突起の圧痛と叩打痛を確認
ベッド、ギャッジアップで疼痛増悪
胸腰椎2方向Xp
T4以上は病的骨折を疑う
根症状や馬尾症状があれば、入院適応
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●Score,Red Flags
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Red flags
①体重減少、癌の既往
②Af、血管risk
③発熱、ステロイド使用
④馬尾症候群、神経症状
(坐骨神経痛+膀胱直腸障害、会陰部の感覚低下、肛門弛緩など)
⑤怪しいTOSS
(増悪傾向、突然発症or一ヶ月以上持続、夜間の痛み)
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・脊椎関節炎を疑う所見
①40歳以上での発症②緩徐な発症③運動で軽快④安静で軽快しない⑤夜間痛
4項目以上あればLR+5.3
→MRIはT2脂肪抑制、STAIRも。化膿性脊椎炎は2椎体以上
・腎梗塞を疑うのは?
①腎盂腎炎かと思ってCTをとったら水腎症、尿管結石など認めなかった
②Afがある、LDHが高い、蛋白尿がある。
→造影CTを躊躇しない
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●フレームワーク
Time course
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Onset
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Situation
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Severe
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随伴症状
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病歴
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検査
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筋骨格系
red flags
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増悪傾向
長期間継続
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突然発症
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重度の痛み
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安静時
夜間の痛み
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発熱、神経症状
消化器症状
呼吸症状
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体重減少、癌
免疫抑制
ステロイド、骨粗鬆症、外傷、高齢者
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脊柱叩打痛
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非筋骨格系
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増悪傾向
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突然発症
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最悪の痛み
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体動で増悪なし
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心血管リスクが高い
性交渉歴、月経歴
不正性器出血
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腹部エコー
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●参考図書●