家庭医療理論

【家庭医療】家庭医の臨床推論は、ミルクボーイ風?

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プライマリ・ケアにおける臨床推論

診療所セッティングで「体調が悪いんだ、、」等の未分化な健康問題を多数扱うようになり、言語化のできない「もやっと感」がありました。しかし、「帰納的採集」の考え方に出会い、スッキリしました。ご紹介したいと思います。

 

一般的な臨床推論とプライマリ・ケアにおける臨床問題の特徴

 ★一般的な臨床推論は、訴えを『医学的主訴』に変換して始まる。
 ★プライマリ・ケア領域で、安易に訴えを『医学的主訴』に変換してよいのか?

1)仮説演繹的モデル 閾値アプローチ

仮説演繹的モデル

♦訴えを『医学的主訴』に変換し、鑑別診断を設定(カードを引き)、事前確率を勘案し、病歴聴取、身体診察、検査を行う

閾値アプローチ

 ♦ある鑑別診断を想定した際に、疾患の確率は診断閾値以上で治療閾値以下であると仮定する
 ♦所見を集め、疾患の確率を上げていく
 ♦医師の行動は2つの閾値(治療閾値と診断閾値)に依存する
  ・治療閾値以上→診断プロセス終了、治療、紹介
  ・診断閾値〜治療閾値→緊急度の高い疾患を除外し経過観察、所見を集める(検査継続or診断的治療)
  ・治療閾値以下→診断プロセス終了、他の鑑別を考える

2)プライマリ・ケアにおける臨床問題の特徴

 ♦『訴え』が生物・心理・社会問題が、未分化に融合した状態(キメラ状態)で現れることが多い
  ・未分化が問題故に、訴えを『医学的主訴』に変換できない
  ・患者の訴えに対して、間違ったラベリングをしてしまう(早期閉鎖)

 ♦『閾値アプローチ』が難しい(確率空間が広い)
  ・各疾患が存在する検査前確率は小さい
  ・高感度の検査でも、ほとんどの疾患が診断閾値に達しない
  ・複数の病態、疾患で説明が可能or医学的に説明がつかないことが多い

 

プライマリ・ケア外来における診断推論〜患者中心のアプローチ〜

★患者中心のアプローチは、ミルクボーイ風??

「無限」の空間

Donner-Banzhoffらは、プライマリ・ケアでの臨床推論においては『無限』の問題空間があると提言した。
・何が問題かもよくわからない『無限』の問題空間の中で、プライオリティの高い問題を抽出しないといけない。

帰納的採集(inductive foraging)

・家庭医は、「体調が悪い、頭が痛い」と言われても、主訴を「頭痛」に変換して、『仮設演繹的モデル』に移らない。
・その前に表面的な質問+身体診察をしながら、「何が問題なのか」に関するヒントを患者と共同して探索する
・そのプロセスを帰納的採集(inductive foraging)と名付けた。
帰納的採集(inductive foraging)
①患者が自分の症状を説明するように促す。
②患者は、自発的に更なる症状や自身の解釈、懸念事項について言及する。
③患者は、異常で関連性のある所見(症状)を示す問題空間を提供する。
④問題空間を共に移動しながら、協同して小さな仮説を立て、その仮説の周りを簡単にチェックし、更に次の採集のために移動し、小さな仮説を更に立てる。
⑤問題収集のプロセス中で、患者が自分の状態に対して「振り返り」が進み、深堀りをするべき「大切な問題空間」が語られる。
⑥その段階で、「大切な問題空間」に対して『仮設演繹型』の思考を発動して、疾患をグループ化し(胃のもやもや感など)、Red Flagsを想定した上で、直接的な質問によって探索する(triggered routines)

 

無限の問題空間を旅しながら、矢印で示される「問題領域」を探索する

帰納的採集は、ミルクボーイ風?

この帰納的採取の過程は、ミルクボーの漫才に似ていると考察する。ミルクボーイのネタ『コーンフレーク』を例に、帰納的採集の理解を深めたい
未分化な問題の発生
いやー、オカンがな好きな朝食あるっていうんやけど名前忘れたらしいねん
①患者が自分の症状を説明するように促す。
ちょっと一緒に考えてあげるから、どんな特徴があるのかおしえてみてよー
②患者は、自発的に更なる症状や自身の解釈、懸念事項について言及する。
あの、カリカリしててな、牛乳かけて食べるやつや
③患者は、異常で関連性のある所見(症状)を示す問題空間を提供する。
その特徴はコーンフレークやないかい
④問題空間を共に移動しながら、協同して小さな仮説を立て、仮説を簡単にチェックし、更に次の採集のために移動し、小さな仮説を立てる。
コーンフレークか、、そうやと思ったんやけどな、オカンが言うにはジャンルでいうたら中華やっていうねん
ほなコーンフレークちゃうやないかい。他に特徴言ってなかった?
そういえば、オカンが言うには、人生最後がコーンフレークでも良いって言うねんな
ほなコーンフレークと違うやないかい
⑤問題収集のプロセス中で、患者が自分の状態に対して「振り返り」が進み、深堀りをするべき「大切な問題空間」が語られる。
ほんでな、オトンが言うにはな、、
オトン??
⑥その段階で、「大切な問題空間」に対して『仮設演繹的モデル』の思考を発動し、明確な仮説をたてず、直接的な質問によって探索する(triggered routines)

意思疎通の困難さがある患者さんでは

意思疎通が困難であれば、帰納的採集は難しい。ある程度最初から仮設演繹的モデルが必要であり、『いつもと違う高齢者』のカードを引く必要がある。

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