継続性のあるケアとは
- 療養しているセッティングが外来、入院、在宅、施設等を移動する際にもスムーズに調整されるケケアを指す。
- 良好な医療者‐患者関係がベースとなる。
継続性のあるケアのメリット
患者さんが感じるメリット
受付で事務の方笑顔をみて,看護師と世間話に花を咲かせて,診察で聴診器を当ててもらい,『癒し』を得てまた定期受診に来る
- 慣れ親しんだ先生に見てもらえる安心感
- 病院全体と患者の関係ができており,医師が変わっても安心感がある
- 大病院で『もう治療出来ない』と言われても,見捨てられたという感覚になりにくい
継続性を有する患者は救急受診が減るかもしれない

Interpersonal Primary Care Continuity for Chronic Conditions Is Associated with Fewer Hospitalizations and Emergency Department Visits Among Medicaid Enrollees
Background: Interpersonal primary care continuity or chronic condition continuity (CCC) is associated with improved health outcomes. Ambulatory care-sensitive c...
- 慢性疾患の継続性(CCC)を有する患者は、CCCを有しない患者と比較して、救急受診の可能性が28%低く(aOR = 0.71、95%CI = 0.71 – 0.72)、入院の可能性は67%低かった(aOR = 0.33, 95% CI = 0.32-0.33 )
ケアを提供する上でのメリット
- 家庭医は継続的かつ包括的なケアを通じて,患者や家族に関する知識を少しずつ蓄積することができる。その知識が家庭医の最も貴重な財産の一つで,人間的なケアの継続性を生む。
ケアの継続性の高まりの段階

責任(accountability)という土台
ケアにおける責任とは?
- Brownは、継続性の経験に関連する要因として『不確定な事柄を扱う際に率直で正直であることを含む医師の責任感』を挙げた。
- 自分が診療できないときは,率直に伝え,情報の継続性(紹介・申し送り)に責任を持つ
- 専門医へ委ねられる時もフォローアップを遂げる
基本となる継続性
情報の継続性
- 過去のイベントや状況に関する情報を利用し、現在のケアに適応すること
- 同じ施設内、もしくは施設を飛び越えて別のケアを提供する者へ包括的に情報を引き継ぐこと
- 治療経過だけはなく、Sufferingの経験やコンテクストなども含めて引き継いでいく
- ケアのセッティングが変わるタイミングでも患者の情報の代弁者・翻訳者である
- 普段の状態を把握し、新たな健康問題が生じた際に早期にその変化を察知し、適切な対応が可能となる
地理的継続性(geographic continuity)
- 外来、在宅、入院、施設など患者がいる場所を問わず継続的にケアを提供していくこと
情報の継続性、地理的継続性のある診療をつつけていくことで、徐々に経時的・縦断的継続性が生まれ、長期的な全人的関係が形成される。
経時的、縦断的継続性/長期的な全人的関係(chronologic/longitudinal continuity)
- 同一の、もしくは同一チームの医療者が、ある地域で時間をかけながら情報を蓄え患者の理解を深め、ケアを提供し続けていくこと
- 継続性のある診療と、それによる病いの体験の歴史の共有が、戦友のような医師患者関係の強化に寄与する
- これらの患者中心な関係の継続性をLongitudinalな関係という
longitudinalityのメリット
- 医師個人とのlongitudinality
- 適切な診断の増加
- 不適切な処方の減少
- 入院の減少
- コストの低下
- 小児における予防接種率の増加
- 医療機関とのlongitudinality
- 予防接種や癌スクリーニングなどの予防医療を受ける割合の増加
- 緊急入院の減少及び入院期間の短縮
- 公的支援を得ている低所得者層における入院の減少
- 医療コストの低下
longitudinalityを発揮するために
- 医師と患者の関係を継続させるには、お互いの努力が不可欠であり、医師の側から提供されるものというよりはむしろ、時間をかけた相互作用であり 患者と家庭医が協働して作り上げていくもの
- その中でも、責任性(accountability)が鍵
- 前提条件として
- アクセスの良さ
- 医師の能力
- 良好なコミュニケーション
- 一つの診療から次の診療へと橋渡しする仕組み
醸成されるlongitudinality
情報の継続性、地理的継続性、経時的継続性の保たれた診療が、longitudinalityな関係を醸成していく
チームとしての継続性(interdisciplinary / team-based/cross-boundary continuity)
- 患者を中心として患者自身も参加し、多職種が協働し合い、互いに補いながら問題解決に向かい包括的なケアをチームで継続的に提供すること。必要に応じてリーダーは様々な職種が担うこと
- 患者との関わりが、医者が変わっても看護師が変わらないなど、チームでcontinuityを維持する
- 情報共有の仕方で、患者さんがチームで見てもらっているなと思えたなど
対人関係の継続性(interpersonal continuity)
- 信頼と責任のうえに成り立つ患者と医療者との間に生まれる信頼関係
- またこの病院に相談にのってもらおうと思ってもらえるような関係
- 数年間健康問題が生じず来院しなかったとしても,なにかあったらまたこの医師に相談しよう」という保健医療上のリソースとして,患者に位置づけられているならば,対人関係における継続性が維持されていると捉えられうる
- 様々なセッティングでの治療を乗り越える上でも、illnessや家族などのコンテクストを把握した上で成り立つlongitudinalな関係は、重要となる
- 癒しの効果も持ちうる
Tips
-
まずは話をよく聞き,責任感を持って行動し,信頼を勝ち取る
-
患者情報を積み重ね,共通の理解基盤を形成する
-
患者も『相談したい』と思い,診療所に来ることが癒やしになる
- 受診していること自体が薬になっている関係性,これこそが本当の継続性となる
患者が「かかりつけ医として」と認める条件

かかりつけ医に求められる条件についての質的研究 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
文献「かかりつけ医に求められる条件についての質的研究」の詳細情報です。J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンターは研究者、文献、特許などの情報をつなぐことで、異分野の知や意外な発見などを支援する新しいサービスです。またJST内外の良質なコンテンツへ案内いたします。
- よくコミュニケーションがとれ、話をよくきいてくれたり、わかりやすく説明してくれる
- 受診のための環境がよく、居住地から近く,その医師の外来単位が多い
- 自分の仕事や生活の様子、性格、価値観などが知られており、職種にかかわらず長く働いているスタッフがいること
- 自分と同じ目線にたってくれて、自分の考えも言いやすく、何でも相談できて、意思決定に参加できる
- しっかりとした知識や技術をもっていて、幅広い健康問題に対処できる。わからない場合、手におえない場合はすみやかに、適切な施設へ紹介してくれる
医師が移動する時代での継続性とは?

Continuity of care: an essential element of modern general practice?
Abstract. For a variety of reasons, GPs are working more and more with unfamiliar patients. The proposed new British GP contract stipulates that in future patie
- GPが発祥した時代は医師同じ地域に住み,長期間継続して診療していた。しかし現代は人が移動する中で継続性とはどのようなものか?
- 『患者に関する情報の継続性』と『適切なコンサルティング』の2つが現代の継続性に寄与し,診療所としての継続性を担保する
ケアの継続性の落とし穴

Continuity and the tension between patient-safety and person-centredness – BJGP Life
- 継続性は、一般開業医を患者の状況や好みに精通していることに自信過剰にし、より安全な治療オプションについて説得力を持たせることにより、間違った方向に導く可能性がある。
診療所のGPの数や、非常勤講師との接触が増えると個人の継続性が低くなりがち

General practice and patient characteristics associated with personal continuity: a mixed-methods study
Background Personal continuity of care is a core value of general practice. It is increasingly threatened by societal and healthcare changes.
Aim To investigat...
- GPの数や非常勤医師との接触が増えると個人の継続性が低くなる傾向があった.継続性を高めるための実現可能な方法は,2~3人の常勤GPが仕事を分担し,不在をカバーしあって、電話診療を効率的に用いながら、小規模で安定した慣れ親しんだチームで働くことかもしれない。
参考文献

Continuity of care in family practice. Part 1: dimensions of continuity - PubMed
This is the first in a series of four articles exploring the issue of continuity of care in family practice. There are four dimensions of continuity of care in ...

Continuity of care: a multidisciplinary review - PubMed
The concept—and reality—of continuity of care crosses disciplinary and organisational boundaries. The common definitions provided here should help healthcare pr...
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