治療効果を示す値について【相対評価と絶対評価】

家庭医療理論

『コロナワクチンは95%の予防効果がある!!』とは?

この95%とは、なんでしょうか?
RCTにより導き出された『相対危険度減少率 Relative Risk Reduction』を示しています。
これは相対評価と呼ばれるもので、注意すべきポイントが1つあります。
治療の効果を示す評価の値についてまとめてみました。
具体例として、今回は
ワクチン接種群の感染率を1%、打ってない群の感染率を10%
として考えてみます。

相対評価

 

相対評価とは、「対照群と比して治療/介入群の発生率は何倍になるか?」という治療の効果を示す指標の一つ

メリット・デメリット

メリット
☑︎『●%減らします!』と、とても分かりやすい
デメリット
☑︎あくまで『●倍』の効果であり、ドングリの背比べの可能性も
☑︎めっちゃレアな病気を10/1に減らした!!すごいでしょ!!とはならない
☑︎何がどのくらい減るか、発生率を確認する
まとめ
『分かりやすいけど、何がどんぐらい減るかちゃんと発生率を見てや』

相対評価の種類

相対危険度 Relative Risk(RR)/リスク比risk ratio (RR)

一定期間内の平均の発生率の比を示す
RR=介入群の発症%/コントロール群の発症%
具体例)
1%/10%=0.1
『コロナワクチンは1/10に抑制』

相対危険度減少率 Relative Risk Reduction(RRR)

相対危険度(RR)の減少分の割合を示す
RRR=(1-RR)×100
具体例)
(1-0.1)×100=90%
『ワクチンの効果は90%』

絶対評価

絶対評価とは、『ある群の、ある期間での薬の実際の効果は?』という治療の効果を示す指標の一つ

メリット・デメリット

メリット
☑︎「●人に打てば、●人が救われる!!」みたいな臨床に直結する情報が得られる
デメリット
☑︎ただ『差』をとるので、あくまで研究デザインの患者層の中での効果が出る
まとめ
☑︎臨床に直結する感覚を得られるけど、『研究デザインと同じ患者層の場合』である事に注意

絶対評価の種類

絶対危険度減少率 Absolute Risk Reduction (ARR)

AAR=介入群の発症% − コントロール群の発症%
具体例)
10%-1%=9pt
『100人に打つと9人が救われる』

治療必要数 Number needed to treat (NNT)

何人治療したら一人を救えるか?
NNT=100÷ARR
具体例)
100/9=11.1→切り上げて12
『1人を救うためには12人に打つ必要がある』

実際の論文

さて、『コロナワクチンは95%効果がある!!』という報道の根拠となった論文をみてみましょう。
2020年10月にNEJMから発行された論文です

 

ワクチンを打った群の感染者8人(18198人中)→約0.044%
ワクチンを打たなかった群の感染者162人(18325人中)→約0.88%
相対危険度率(RR)0.044/0.880.05
相対危険度減少率(RRR)=(1-0.05)×100=95%
相対評価で見ると『95%も効果がある!!』というわけです。
絶対危険度減少率 (ARR)0.88%-0.044%0.836%
治療必要数(NNT)=100/0.836120
絶対評価でみてみると『120人に打つと1人救える!!』という計算になります。

相対評価と絶対評価

95%も効果がある!!』と『120人に打つと1人救える!!』では、聞こえ方に大きな差があります。
コロナワクチンを打った方が良いのかは、議論の余地がありません。
コロナワクチンはゲームチェンジャーになるかもしれません。
重要なことは、ただ一つ
「相対評価で物を語るときは、何がどんぐらい減るかちゃんと発生率を見てや」
目の前の患者さんの効果がどのくらいかは、研究デザインの患者さんと、目の前患者さんの違いを比較して予測を!

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