症例
46歳女性、2日前から増強傾向にある左側腹部痛と発熱を主訴に受診、左側腹部に圧痛あり。
腹部CTを撮像すると周囲の脂肪織上昇を伴った下行結腸の肥厚と、憩室がみられ、憩室炎と診断した。
自宅に帰りたいとの希望があり、外来で治療する方針とした。
腸管の疾患に対しては、絶食もしくは食事制限が鉄則である。
しかし、状態の落ち着いており、Generalも悪くない当患者に対して、食事療法を施行するか悩ましく、下記CQをたてた。
P:血行動態が安定し、膿瘍や穿孔を伴わない憩室炎を外来で治療する患者
I:食事制限を実施することは
C:食事制限を実施しないのと比べ
O:治療失敗を増やすか
二次文献
大腸憩室症ガイドライン2017
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001033/4/diverticulosis_of_colon.pdf
CQ:膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎の治療に、食事制限と腸管安静は有効か?
→A:炎症反応や発熱等から入院加療を要する場合には、食事制限と腸管安静を実施することを提案する。
「食事により腸管内圧が高まり,腸管蠕動が誘発することを考えると,食事制限と腸管安静 は大腸憩室炎治療に有効と考えられるが,外来患者に食事制限や腸管安静を必ずしも施行していないのが現状である 」
Up to date
Acute colonic diverticulitis: Medical management>SUMMARY AND RECOMMENDATIONS
・clear liquidsなどの食事制限を支持する医療者もいるが、患者の食事を制限しない医療者もいる
・抗菌薬開始後2-3日後に臨床的に再評価、症状が完全に消失するまで毎週フォローする
・臨床的に進行しない場合を除いて、画像検査を繰り返す必要はない
一次文献
Systematic Review
Vennix S, et al. Systematic review of evidence and consensus on diverticulitis: an analysis of national and international guidelines. Colorectal Dis. 2014 Nov;16(11):866-78. PMID: 24801825.
「急性単純性憩室炎における食事制限」
急性単純性憩室炎において、制限食の有益性を示す証拠はない。ASNおよびDSSガイドラインでは、急性期に忍容性があれば通常の経口摂取を推奨している。ASCRSは食事に関する勧告をしていないが、食事の変更の選択肢と経口液剤の必要性について述べている。
結論:急性単純性憩室炎における食事制限のエビデンスはない。
まとめ
憩室炎に対して食事療法の有無を比較したエビデンスは不足している様子だが
概ね「食べられれば摂取ok」の流れはありそう。
どちらにしろ、「疼痛が消失するまでフォローアップ」することが大切!
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